「量子」という言葉は実はとても広く使われています。電子や原子のように「もの」に量子という言葉が使われたり、そのような量子的なものが持つ性質として使われたりしています。 また量子の世界で起こっている「こと」や現象に対して使われるときなど、様々なところで「量子」という言葉が出てくるので、わかりづらいときがあります。 ここでは少し整理しながら説明していきましょう。
量子の世界はどこにあるの?

量子の世界は太陽や銀河系の外など遠いところにあるわけではありません。 みなさんが思うより実は身近なところにあります。 私たちの体や身の回りのものは全て電子や原子で出来ています。 これらの電子や原子が住んでいるところ、そのとてつもなく小さな世界が量子のすみかです。 例えば水素原子は0.1ミリメートルの1000分の1、のさらに1000分の1程度の大きさです。 これら量子の世界に住んでいる電子や原子、それ以外の住人もまとめて「量子」と呼ばれています。
量子の世界のルール

私たちの普通の生活では、みなさんが高校生までに習うニュートン力学や古典力学と呼ばれる物理法則に従ってものは運動します。
例えば投げたボールが放物線を描いて飛んでいったり、車がブレーキをかけると止まるというのも古典力学で説明できます。
しかし、量子の世界では、私たちが知っている物理法則とは少し異なる法則でものが運動しています。
この物理法則こそが「量子力学」です。量子の世界に住む電子や原子は、この量子力学に従って運動します。
量子力学は私たちにとっては外国のルールのようなもので、私たちが普段見慣れている物理法則とは全く異なるため、私たちにはとても不思議に見えるのです。
これらの不思議な量子のふるまいのことを「量子的なふるまい」と呼んでいます。
量子力学は1800年代後半から1900年代前半にかけて多くの物理学者が議論を通して見つけ出した物理法則です。
量子の世界は肉眼でも全く見えないほど小さなミクロな世界です。
この見えない世界の法則を見破るため、たくさんの実験とその実験結果に基づいた考察を積み重ねてきました。
全て数えられる、「量子化」というアイデア

量子力学の考え方の中でも不思議なものの1つが、量子力学の名前にも含まれている「量子化」というアイデアです。
量子化というのは物やある性質がとびとびの値を取るということです。
コップの中に水が500g入っているとしましょう。
少し水をこぼすと400gぴったりにでもできるし、272gというとても中途半端な値にもできます。
でも、これがみかんだとどうでしょう、1個100gのみかんが5個かごに入っていると、これを400gにするには1個みかんを取り出せば良いのですが、272gにはできません。
つまり、みかんの重さはとびとびの値を取ります。
太陽から飛んでくる光の量はまるで水のように,少し明るくなったり暗くなったり色々な明るさがあるように物理学者は考えていました。
ですが、プランクという人が「光は(みかんのように)1個2個と数えれるものだ」と予想しました。
これが「量子化」の始まりです。
量子化とはエネルギーや運動量といった物理量が1個、2個と言うようにとびとびの値を取るという、
これまでの物理学に無い量子力学特有のアイデアでした。
量子の性質

量子の世界ではたくさんの不思議なことが見受けられます。
例えば,コインなげをするとコインはふつう表か裏を向きます。
コインが量子の性質を持つと、表と裏が両方混ざったような不思議なコインが登場します。
このコインは表と裏の「重ね合わせ状態」と呼ばれます。
この他にも、量子もつれ、粒と波の二重性、スピンなど量子特有の性質が色々あります。
また、量子の振る舞いも私たちから見るととても変わっています。
壁をスルッと通り抜けるトンネル効果、遠くまで量子の状態を飛ばせる量子テレポテーションなど、不思議な現象がたくさんあります。
このような量子の性質が少しずつ観測されるようになってきてからおおよそ100年が過ぎました。
最近ではこの量子の性質を見るだけではなく、様々な方法で「使う」ことが出来るようになってきました。
これからは量子と人間が手を合わせることで開発される、様々な量子のテクノロジーを通して世界が変わっていくだろうと言われています。
量子のふるまいを計算する
量子力学の発展は、量子の不思議を少しずつ紐解いていくことで進んでいきました。 その中でも大きな功績の1つが、量子の振る舞いを予想可能にした発見です。 量子の運動の予測はハイゼンベルクのアイデアから、「ハイゼンベルクの運動方程式」と呼ばれる量子の振る舞いをあらわす方程式へと発展しました。 ほぼ同時に、量子の波がどのように広がっていくかを表す「シュレーディンガーの波動方程式」も発表されました。 このシュレーディンガーの波動方程式とハイゼンベルクの運動方程式が同じものであることをディラックが示したことは有名です。 これらの素晴らしい発見はおおよそ1925年頃でしたが、それらを記念して2025年が量子力学誕生100周年と制定されることになりました。
