量子の世界ではマンガや映画の世界のような「ワープ」が起こる?この現象が、未来の通信やコンピュータ技術を切り開きます。
量子の状態の「ワープ」
みなさんは、「テレポーテーション」って聞いたことがありますか?
マンガや映画に出てくる「ワープ」のように、一瞬で遠くに移動する空想上の技術のことです。
実は、量子の世界ではこれに似た「量子テレポーテーション」ができることが知られています。
ただし、人間やものを送ることはできず、量子の「状態」を遠く離れた別の量子にワープさせる技術です。
量子テレポーテーションのカギを握るのが「量子もつれ」です。
量子もつれの関係にある2つの量子は、たとえ遠く離れていても息ピッタリでふるまう不思議な関係にあります。
この現象を使って、量子の「状態」を遠くに送るのが量子テレポーテーションなのです。
量子テレポーテーションのしくみ
「重ね合わせ状態」の説明で出てきた、グー・チョキ・パーの手の状態を例にして説明しましょう。
東京にいるAさんの手がグー・チョキ・パーのどれかの状態だとします。もし、大阪にいるBさんの手を同じ状態にしたかったらどうすればよいでしょう?この場合は、Aさんの手の状態を見て確認して、Bさんに電話で伝えればOKです。Bさんは教えてもらった手の状態にすれば、Aさんと同じ状態になります。

ではもし、Aさんの手がグー・チョキ・パーの「重ね合わせ」の状態だったらどうでしょう? 前と同じ方法は使えません。なぜなら、Aさんの手を見て確認した瞬間に、それはグー・チョキ・パーのどれか1つに決まってしまうからです。これでは、Aさんの手がもともとどんな重ね合わせ状態だったのかが分からず、作戦失敗です。

そこで、量子もつれの出番です。大阪にいるBさんの双子の姉妹であるCさんが東京にいて、2人の手は量子もつれの関係にあるとしましょう。2人の手はグー・チョキ・パーのどれかは決まっていませんが、どの手かを確認すると、テレパシーのように必ず同じ手が出るという不思議な性質を持っています。

このとき、AさんとCさんが手をつないで特別な方法で測定し、その結果をBさんに伝えると、なんとBさんの手が、Aさんの手の元の重ね合わせ状態になるのです。これはまるで、Aさんの手の状態がCさんを通じてBさんの手に「ワープ」したかのように見えます。これが量子テレポーテーションです。

量子テレポーテーションは、どれほど遠く離れていても、まるで光の速度を超えて量子の持つ情報(状態)を一瞬で送れるように見えます。しかし実際には、AさんとCさんの手の測定結果をBさんに伝えないと、ワープは起こりません。この伝達には電話などの普通の通信を使うため、光の速度を超えて情報を伝えることはできないのです。
量子テレポーテーションが未来のテクノロジーを切り開く
量子テレポーテーションのアイデアは1993年に生まれ、1997年にはじめて光の粒(光子)を使って実験が行われました。その後、原子や電子などさまざまな量子で実現され、今では量子技術において欠かせないテクノロジーの1つとなっています。
たとえば、量子テレポーテーションを使うと、遠く離れた場所に安全に情報を送ることができます。また、光子から原子へというように、別の種類の量子へ情報を移し替えることも可能です。さらに、量子コンピュータの中で計算を行う場面でも活躍します。量子テレポーテーションの研究はまだ進化の途中ですが、これが実用化されれば、未来の通信やコンピュータ技術に大きな革命をもたらすかもしれません。
