超伝導量子回路は、とびとびの電圧や電流を量子として操作できる電気回路です。極低温下で起こる不思議な回路を計算機にする研究が進められています。
超伝導回路
超伝導体は限りなく抵抗の小さな電気回路として知られ、電流が減ることなく信号を伝達したり、強い電磁石となったりすることができます。 リニアモーターカー、携帯電話の基地局、放射線を使わない身体断層診断や生化学物質の分析、天文用検出器、超高速ディジタル論理回路などに応用されています。これらの応用で使われている温度よりさらに低い絶対零度(マイナス273度)に近くでは、電気回路の電気信号そのものが量子となり、粒の性質と波の性質をあわせもつ量子効果を身にまといます。
量子力学的な電気回路
超伝導体で作った電気回路を絶対零度に置くとどうなるでしょうか。
損失が小さくなることはもちろんですが、例えばループを描いた回路に流れる電流の値はとびとびの値をとるようになります。
他にもキャパシタに閉じ込められた電荷の値も飛び飛びの値をとるようになります。
さらに、電気の通らない薄い壁で回路を区切ると、電流や電荷がトンネルを通り抜けるように壁をすり抜けたり、すり抜けられなかったりします。
このような仕組みを使って自由自在に量子を操作するのです。
超伝導量子コンピュータ
超伝導の電気回路とジョセフソン接合と呼ばれる薄いトンネル障壁を用い、量子力学的な性質を使った計算の仕組みが研究されています。超伝導のループコイルに閉じ込められた飛び飛びの値をとる電流や、キャパシタに閉じ込められた離散的な電荷を、ジョセフソン接合と電圧・電流パルスを用いて操作します。トンネル障壁は量子が通り抜けられたり、抜けなかったりするため、この確率を制御することで重ね合わせ状態や、量子もつれを作りだすことができるのです。離散的な電圧・電流の状態に情報の0と1を割り当てて、0と1を同時に計算する超伝導量子コンピュータが研究開発されています。

