電子などの小さな粒(粒子)を狭い空間に閉じ込めた状態を「量子ドット」と言います。レーザーや太陽電池、量子コンピュータまで様々なものに応用されています。
量子ドットとは?
電子などのとても小さな粒(粒子)を、小さな箱の中に閉じ込めて、横にも縦にも上下にも動けないようにしたものを「量子ドット」といいます。量子ドットの中では、電子のエネルギーが決まった値しかとれなくなり、まるで人工の原子のようなふるまいをします。
量子ドットを作る方法はいくつかありますが、ここでは特別な材料(半導体)を使って、とても小さな形を作る方法を説明します。
まず、上下方向の閉じ込めは、電子が特定の場所から逃げないようにすることです。これは、違う種類の材料を組み合わせることでできます。たとえば、水がボウルの外に流れ出せないように、電子も「出られない壁」を作ることで閉じ込められます。
次に、横方向と縦方向の閉じ込めには、2つの方法があります。
-自然にできる小さなドームを使う(自己組織化成長法)
ある材料の上に別の材料をのせると、小さなドームのようなものが自然にできます。葉っぱの上に水滴を落とすと、小さな水玉ができるのと似ています。この小さなドームの中に電子を閉じ込めることで、量子ドットを作ることができます。
-通行止にする方法(リソグラフィー技術)
まず、半導体の表面に特別な模様(パターン)を作ります(これをリソグラフィー技術といいます)。その形を使って、電子が入れる場所と入れない場所を作り出します。これは、道路を作って通行できる道を決めるのと似ています。電子が進める場所を作り、他の場所には壁を作ることで、電子を特定の領域に閉じ込めることができます。

何に役立つの?
量子ドットは、私たちの生活の中ですでに使われています。たとえば、レーザーや太陽電池に役立っています。量子ドットのすごいところは、電子のエネルギーが決まった値しかとれないことです。そのおかげで、吸収したり出したりする光の色をとても細かくコントロールできます。このしくみを使うと、電気をより効率よく光に変えることができるので、エネルギーを無駄にしない仕組みが作れます。また、量子ドットの大きさを変えることで、好きな色の光を出すことができるため、ディスプレイやライトにも応用されています。
量子ドットと量子コンピュータ
量子ドットは、量子コンピュータにも使われています。量子コンピュータでは、「量子ビット」という特別な情報の単位を使います。量子ドットの中に電子を1つ閉じ込めると、その電子のスピン(電子が持っている小さな磁石のような性質)を使って「0」や「1」の情報を表すことができ、これを用いて「量子ビット」を作る研究がされています。最近では、電子だけでなく「正孔(せいこう)」と呼ばれる粒子も量子ビットとして使う研究が進んでいます。正孔は、電子がいなくなった場所がまるで「プラスの電荷を持つ粒子」のようにふるまうものです。この正孔を量子ドットに閉じ込めることで、新しいタイプの量子ビットを作ろうとする研究が行われています。
